栄養素に迫る:細胞の生まれ変わりを支える緑のビタミン – 葉酸 –

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「葉酸」と聞くと、「妊娠中の人が摂るもの」というイメージが強いかもしれません。もちろんそれも大切な役割の一つですが、実は葉酸は、年齢や性別を問わず、毎日の血液づくりや細胞の生まれ変わりに欠かせないビタミンです。しかも、熱や水に弱く、料理の仕方で量が大きく変わる“ちょっと繊細な”栄養素でもあります。連載「栄養素に迫る」第4回は、前回のビタミンB12の相棒ともいえる葉酸に迫ります。

葉酸を含むいちごを入れた食事

葉酸とは?

葉酸は、水に溶けるビタミンB群の仲間です。ほうれん草の葉から見つかったことから「葉酸」と名づけられました。名前のとおり緑の葉物野菜に多く含まれますが、レバーや豆類、のり、果物などにも含まれています。

葉酸には、食品にもともと含まれる形と、サプリメントや栄養強化食品に使われる形(プテロイルモノグルタミン酸)があります。食品中の葉酸は体内での利用効率が約50%とされ、サプリメントなどの葉酸より吸収されにくいのが特徴です。食事摂取基準でも、この2つは分けて考えられています。

葉酸の体への働き

  • 赤血球をつくる:ビタミンB12と協力して、骨髄で正常な赤血球がつくられるのを助けます。
  • DNAの合成と細胞分裂を支える:DNAやRNAの材料づくりに関わり、細胞が分裂して生まれ変わるときに欠かせません。皮膚や腸の粘膜など、入れ替わりの早い細胞ほど葉酸を必要とします。
  • 赤ちゃんの成長を支える:妊娠のごく初期は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる「神経管」がつくられる時期。十分な葉酸は、神経管閉鎖障害のリスクを下げることがわかっています。
  • ホモシステインの代謝:血液中のアミノ酸の一種「ホモシステイン」を別の物質に変える反応に、B12・B6とともに関わります。
葉酸が赤血球づくり・細胞分裂・胎児の発育に関わる図

不足すると・摂りすぎると

葉酸が不足すると、大きく未熟な赤血球ができる「巨赤芽球性貧血」が起こり、疲れやすさや動悸、息切れ、口内炎などが出ることがあります。また、血液中のホモシステインが高くなります。妊娠初期の不足は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害(二分脊椎など)のリスクを高めます。野菜をあまり食べない方、お酒をよく飲む方、一部の薬(抗てんかん薬やメトトレキサートなど)を使っている方は不足しやすいとされます。薬を飲んでいる方は自己判断せず、医師や薬剤師に相談しましょう。

一方、ふつうの食事で摂りすぎになる心配はほとんどありません。注意したいのはサプリメントや強化食品での摂りすぎです。大量の葉酸はビタミンB12不足による貧血を見えにくくし、B12不足による神経の障害の発見を遅らせるおそれがあります。そのため、サプリなどの葉酸には耐容上限量が設けられています。

1日にどれくらい必要?(2025年版の基準)

2025年版の「日本人の食事摂取基準」では、成人の推奨量は男女とも1日240μgです。妊娠中期・後期と授乳中は、これに上乗せ(付加量)が設けられています。

年齢など推奨量(男女)耐容上限量(男女)
18〜29歳240μg900μg
30〜49歳240μg1,000μg
50〜64歳240μg1,000μg
65〜74歳240μg900μg
75歳以上240μg900μg
妊婦(中期・後期)+240μg-
授乳婦+100μg-
出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」。耐容上限量はサプリメントや強化食品に含まれる葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)に適用されます。

さらに、妊娠を計画している方や妊娠の可能性がある方は、神経管閉鎖障害のリスクを下げるために、ふだんの食事に加えて、サプリメントなどから1日400μgの葉酸を摂ることが望ましいとされています。神経管ができるのは妊娠に気づく前の時期なので、「わかってから」ではなく「計画した時点から」がポイントです。

葉酸を多く含む食べ物

葉酸の多い食品の代表は、緑の野菜・豆類・レバー・のりです。季節の菜の花や枝豆は、少量でも1日の推奨量の半分以上を摂ることができます。

食品葉酸(100gあたり)1食分の目安
にわとり肝臓(鶏レバー・生)1,300μg焼き鳥1本分(30g)で約390μg
なばな(和種・生)340μgおひたし1鉢分(50g)で約170μg
えだまめ(生)320μgむき身50gで約160μg
モロヘイヤ(生)250μg1/2袋(50g)で約125μg
ブロッコリー(生)220μg小房3個(50g)で約110μg
ほうれんそう(生)210μgおひたし1鉢分(70g)で約147μg
いちご(生)90μg5粒(75g)で約68μg
糸引き納豆120μg1パック(45g)で約54μg
焼きのり1,900μg全形1枚(3g)で約57μg
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」の数値をもとに作成。野菜は生の値で、ゆでると減ります。1食分は一般的な重量からの概算です。
葉酸を多く含む菜の花

レバーは葉酸が非常に豊富ですが、ビタミンAも多いため、とくに妊娠中は毎日たくさん食べるのは避けましょう。ふだんは野菜・豆・果物を組み合わせるのが続けやすい方法です。

表の中にある枝豆と言えば、ずんだもちもいいですね。枝豆をすりつぶしてお餅にまぶした東北の郷土料理です。おすすめです…!美味しく効率よく摂取していきましょう。

上手な摂り方のコツと注意点

  • 加熱は短く、ゆでるより蒸す・レンジで:葉酸は熱や水に弱く、たっぷりのお湯で長くゆでるとゆで汁に流れ出てしまいます。蒸し料理や電子レンジ加熱、さっとゆでる程度がおすすめです。
  • 汁ごと食べる料理に:ほうれん草や菜の花を味噌汁やスープに入れれば、溶け出した葉酸も一緒に摂れます。
  • 生で食べられるものは生で:いちごやアボカド、焼きのりなど、加熱せずに食べられる食品は手軽な葉酸源です。
  • 買ったら早めに:葉酸は光や保存でも少しずつ減ります。野菜は新鮮なうちに食べ、使い切れない分は冷凍を活用しましょう。
  • ビタミンB12とセットで:赤血球づくりはB12との共同作業。緑の野菜に、魚や卵、貝を組み合わせましょう。
  • サプリは表示の量を守る:妊娠を計画中の方以外は、まずは食事から。サプリを使う場合は複数の製品を重ねて摂りすぎないよう注意しましょう。

葉酸の最新研究

① 2025年版の食事摂取基準(公的機関)
厚生労働省の2025年版では、成人の推奨量240μgが示されるとともに、妊娠を計画している女性などには、通常の食品以外から1日400μgの葉酸を摂ることが引き続き望ましいとされています。妊娠前からの準備の大切さが、あらためて示された形です。

② 日本人の食事と認知症の関係(2025年・観察研究)
日本の地域住民約4,200人(40〜69歳)を平均15年あまり追跡した研究では、食事からの葉酸の摂取量が多いグループほど、介護が必要になる認知症の発症が少ない傾向がみられたと報告されています。ただし食事の内容を調べて経過を追った観察研究で、葉酸そのものが原因とまではいえません。野菜をよく食べる人の生活習慣全体が影響している可能性もあります。

③ 葉酸サプリと認知機能(2024年・メタ解析)
22件のランダム化比較試験(約3,600人)をまとめた2024年の解析では、軽度認知障害の人で葉酸の補充により認知機能の指標が改善し、血中ホモシステインも下がったと報告されています。一方、血管性の認知機能障害では改善がみられず、試験ごとの差も大きいため、結論はまだ慎重に見る必要があります。

認知機能との関連は? 葉酸が不足すると認知機能の低下と関わる可能性が指摘されていますが、不足していない人がサプリで補って認知症を防げるという確かな根拠は、今のところありません。まずは毎日の食事で不足しないことを大切にしましょう。

まとめ

  • 葉酸は赤血球づくりと細胞の生まれ変わりを支える、ビタミンB群の仲間
  • 2025年版の基準では成人の推奨量は1日240μg。妊娠を計画中の方は、サプリ等から400μgもプラス
  • 菜の花・枝豆・ブロッコリー・ほうれん草・納豆・のりが身近な供給源
  • 熱と水に弱いので、加熱は短く、蒸す・レンジ・汁ごと・生でがコツ

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参考文献

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的助言ではありません。貧血などの症状がある方、持病のある方、治療中・服薬中の方、妊娠中・妊娠を計画中・授乳中の方、サプリメントの利用を検討している方は、医師・薬剤師・管理栄養士にご相談ください。

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